2025年12月6日(日)14:00開演
札幌コンサートホール kitara 大ホール
ピアノ:清水 和音
指揮:梅田 俊明
管弦楽:札幌交響楽団

●ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 Op.73「皇帝」
第1楽章 Allegro
第2楽章 Adagio un poco moto
第3楽章 Rondo:Allegro
intermission
●チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 ロ短調 Op.23
第1楽章 Allegro non troppo e maestoso-Allegro con spirito
第2楽章 Andantino semplice
第3楽章 Allegro con fuoco
●ラフマニノフ:ピアノ協奏曲2番 ハ短調 Op.18
第1楽章 Moderato
第2楽章 Adagio soutenuto
第3楽章 Allegro scherzando
encore
●ラフマニノフ:ヴォカリーズ アール・ワイルド編
目次
壮大で威風堂々とした「皇帝」

華やかな曲想の「皇帝」ですが、作曲された背景には当時のウィーンはナポレオンに占拠され、ベートーヴェンの愛弟子であり最重要のパトロンともなったルドルフ大公は国外へ逃避し、ベートーヴェンは地下室で作曲活動を行っていたといいます。冒頭の堂々としたピアノのカデンツァを聴くと、そのよう背景の中で書かれたことに驚きます。
清水和音さんの演奏は上体をほとんど動かさず、無駄な動きが一切なく、柔らかいタッチで弱音から力強いフォルテを自由自在にラクに鳴らすので、どうしてそんなことができるのだろうかと不思議に思います。
オーケストラが演奏している時、胸に手を当てて深い敬意を表しているように感じました第2楽章の穏やかでチャーミングな雰囲気が第1楽章と第3楽章を際立たせていると思います。ピアノソナタの「悲愴」「月光」「熱情」でも第2楽章の存在は大きいですよね。
ピアノ協奏曲の中で一番人気

以前、アンケートを募って3つのピアノ協奏曲を選んだ結果、第1位に輝いたのはチャイコフスキーの第1番でした。その時に演奏されたピアニストが清水和音さんでした。ちなみに第3位はグリーグのイ短調で奏者は田部京子さん、2位はラフマニノフの2番で奏者は横山幸雄さんでした。
ピアニストであり友人のニコライ・ルビンシテインに「演奏不可能」といわれた超難曲を軽々と弾きこなしてしまう清水和音さん。オーケストラと掛け合いが楽しく、指揮者の表情やオーケストラがよく見えて面白かったです。
1番好きなピアノ協奏曲

中学生のときにレコードを買って、この曲が一番のお気に入りでした。ピアノから始まるラフマニノフの第2番。この冒頭は何度聴いても鳥肌が立ちます。それが清水和音さんの演奏で聴けたので感動しました。本当にピアノ一台で弾いているとは思えないほど重厚な音でした。
ハ短調を聴くと何故か血が騒ぐと分かったのも中学生のときでした。一般的に短調は「暗い」「悲しい」といった印象がありますが、ハ短調は劇的であり、どんな困難にも立ち向かって乗り越えられるエネルギーを感じます。ベートーヴェンの「運命」がまさにそれで、そして、ラフマニノフの2番を聴いた時も同じだと思いました。だから落ち込んだときに、よくこの作品を聴いたものです。
ヴォカリーズ〈アール・ワイルド編〉
若い時に清水和音さんのリサイタルを聴きました。何度か書いたことがありますが、その日はカワイ主宰のコンサートで子供が多く演奏中に煩かったのです。すると清水和音さんは「うるさくするなら出て行ってくれ」と注意したので、とても驚きました。そして、アンコールにヴォカリーズ〈アール・ワイルド編〉を演奏され、その素晴らしい演奏に感銘を受けました。その日、アンコールピースのCDを買って、清水和音さんに「素晴らしかった」と感想をいえました。
ピアノ協奏曲を3曲も演奏されたのに、すぐに何度もステージに軽やかに登場される清水和音さん。あまりの素晴らしい演奏に拍手が鳴り止みませんでした。








